Masuk52.
第四話 先生の麻雀
「おーい、家政婦さんたちー。もうお昼過ぎだしそろそろ休憩して下さーい」
「……あ、もうそんな時間でしたか」
「私は洗濯物を干したら一旦終わりにする。チュンは先に休憩入っていいよ」
「そうですか、それではお言葉に甘えて先に休みますね」
そう言って紅中は居間に移動した。
────
「お待たせ、チュン。お昼はどうする予定なの?」
「近くにとんかつ屋さんがありますのでそこに行こうかと」
「いいね。錦野兄妹はお昼はどうするつもりなんだろう?」
「2人はひと足先にそのとんかつ屋さんに行かれていたみたいです。それで私もオススメされました」
「そうだったんだ。いつの間に」
「家が広すぎですからね。これだと遠くにいる時は人の出入りにも気付きませんね」
その頃、妹の今日子は部屋にこもって夢中で紅中の描いた漫画を読んでいた。
どうやら麻雀の場面で理解が難しい所に直面したらしく、紅中は流して読んでくれていいつもりで描いた場面なのだが全てを理解したい派の今日子は何回も何回も読み返して自力で理解しようとしていた。
どうもこの話が難しくて一度読んだだけでは分からなかったようだ。
◆◇◆◇
東京雀士物語
レッドドラゴン:著
1巻第三話
『先生の麻雀』より
先生手牌 切り番 南3局
②③③④④赤⑤⑤3466六七八
ここから1枚外してテンパイの手になった。ドラは2索
タンピ
52.第四話 先生の麻雀「おーい、家政婦さんたちー。もうお昼過ぎだしそろそろ休憩して下さーい」「……あ、もうそんな時間でしたか」「私は洗濯物を干したら一旦終わりにする。チュンは先に休憩入っていいよ」「そうですか、それではお言葉に甘えて先に休みますね」 そう言って紅中は居間に移動した。────「お待たせ、チュン。お昼はどうする予定なの?」「近くにとんかつ屋さんがありますのでそこに行こうかと」「いいね。錦野兄妹はお昼はどうするつもりなんだろう?」「2人はひと足先にそのとんかつ屋さんに行かれていたみたいです。それで私もオススメされました」「そうだったんだ。いつの間に」「家が広すぎですからね。これだと遠くにいる時は人の出入りにも気付きませんね」 その頃、妹の今日子は部屋にこもって夢中で紅中の描いた漫画を読んでいた。 どうやら麻雀の場面で理解が難しい所に直面したらしく、紅中は流して読んでくれていいつもりで描いた場面なのだが全てを理解したい派の今日子は何回も何回も読み返して自力で理解しようとしていた。 どうもこの話が難しくて一度読んだだけでは分からなかったようだ。◆◇◆◇東京雀士物語レッドドラゴン:著1巻第三話『先生の麻雀』より先生手牌 切り番 南3局②③③④④赤⑤⑤3466六七八 ここから1枚外してテンパイの手になった。ドラは2索 タンピ
51.第三話 家政婦のイメージ「では、私達は家事全般をまず終わらせますね。麻雀はそのあとで」 とは言ってみたものの…… 錦野邸の掃除はやってもやっても終わりが見えず、途方もない作業であった。「これ、終わる日って来るんですかね」「この掃除に終わりは無いに等しいのでどこかで我々のほうが妥協して終わらせないと掃除してるうちに婚期を逃すわね」「シロ子は婚期とか気にしてたんですか。ていうかシロ子は27歳ですよね? 婚期ってもう過ぎ去ってませんか?」「考え方古いわねチュン。イマドキの結婚適齢期は20代後半〜30代前半なのよ。結婚は25歳までとか言ってた時代はとうの昔なの」「あ、そうなんですか。結婚とか自分に縁のない話だから疎いんですよね」「私も縁は無いけど……」 言ってて悲しくなったのかシロ子は元気がない声でそう言った。「……ま、まあまあまあ。そんな気にしなくてもシロ子は美人だから大丈夫ですよ。ねぇ? ご主人様もそう思いますよね?」「あ……うん。そうですね(ご主人様って、おれ?)」「チュン。あんた、依頼主のこといつも『ご主人様』って呼んでんの?」「え、はい。そうですけど、変でした?」「何年前の家政婦のイメージよ。大豪邸に仕えるメイドじゃないんだから。イマドキは『◯◯さん』か『◯◯様』が主流よ」「そうだったんですか!? あ……でも。ここは大豪邸ですよ」「確かに!」「まぁ、確かに大きな家かもしれないけど『ご主人様』はやっぱり変な感じするので普通に『サスガ』って呼んでくれると嬉しいかな」「承知致しました『サスガ様』」「ん…&hell
50.その6第二話 諦められるのも才能「なんですかその、ネット対戦というのは」「紅中は電子機器に疎いの半端じゃないよね。漫画作りの時しかメカ触らないんじゃない?」「失礼な、私だって携帯電話を持っていますよ」「それ、何に使ってる?」「通話とメール。あとたまにカメラ機能を使いますね」「ほら。それ最低限の使い方じゃん。カンタンケータイとかいうやつで大丈夫なんじゃない?」 そう、紅中は味音痴の他にも実は機械音痴という欠点があるのだ。まあそれは他のスタッフがカバーできたり、紙などを使うことで問題が解決するから大丈夫っちゃあ大丈夫なのだけど、しかし今どきの26歳にしてはあまりにも時代遅れではある。「漫画描く時はiPad使ってるんでしょ? 少しずつでも機械化に慣れてかないと時代に取り残されるんじゃない?」「むむむ……! 来年の今頃もまだ機械を使えてなかったらマウント取って下さい」「なんで?」「シロ子は私と1歳差でしょう。私も27歳になるまでには電子機器に慣れておきますから」「チュンは変わらない気がするけどなぁ」「人は成長します……!」 すると、紅中とシロ子のやり取りを聞いていた錦野流石がケラケラと笑い出した。「面白い。クク……チュンさんだっけ? 面白いなアンタ。おっとりした見た目してる割には気は強いんだね。それに何? 漫画描いてるの? 今度見せてよ」「今度と言わず今すぐにでも。今日持ってきてますので」「ぜひ読んでみて。チュンが描いて私がアシスタントをしてるの」とシロ子も漫画をオススメしてきた。 すると「私読みたい」と別室でテレビを観ていた今日子が漫画の話に反応してきた。「と、言っ
49.ここまでのあらすじ『特化家政婦専門事務所 アズマ』には接待麻雀の専門家が揃っている。その中でも成績優秀なエース家政婦が『紅中』。 紅中はいつもその接待麻雀の腕で依頼主の心を掴み契約を取ってきた。はたして次はどんな依頼が紅中を待ち受けるのか――【登場人物紹介】紅中ほんちゅん 本名は真中紅子。チュンの愛称で親しまれる成績優秀な『アズマ』のスーパーエース。趣味は同人誌作りでプロ顔負けの漫画を描く実力者。ビジュアル的にもイイ女だが味音痴なのが玉にキズ。いつか同人誌フリマで壁サークルになるのが夢。東あずま 本名は東正美。アズマの所長。口では厳しいことを言うがその実は面倒見が良くて母性に溢れた優しい女性である。緑發りゅうは 本名は阿智山緑。アズマの給料泥棒。基本的に事務仕事専門。頭脳明晰で高学歴。身長144センチで高い所に届かない。しかも人見知り。家政婦をやるには少し向いてない女。麻雀は得意でどんなルールの麻雀も器用にこなす。ミナミみなみ 本名は片岡南。アズマに所属している家政婦。成績はそこそこ優秀で紅中の次くらいに稼いでくる。紅中の成績にあやかって最近は長い髪をお団子にした。シロ子しろこ 本名は白田雪子。アズマ所属の家政婦。出勤日数は少なめで実家暮らしの27歳。アズマに出勤してない時は本を読んだりSNSをしたりでゆっくりしてる。たまに紅中の同人
48.サイドストーリー2イノウエ順子短編集その2大妖怪 井之上家との契約を変更したその日、紅中はイノウエ順子短編集を読んでいた。 (このストーリーは短いからほんのオマケみたいに書かれて注目度も低かったですけど。書いてある内容はすごく高度で『わかる人にはわかる』という名作でした。これを章生さんは読んでないんですかね? それともまるっきりフィクションだとでも解釈したんでしょうか。私にはこの物語は本当は純子さんのエッセイなんじゃないかと思うんですが。だって、輪ゴムで縛るとか。右腕の袖にひっかかって倒れるとか、リアルすぎるんですよね。……これきっと実話なんでしょうね。…………大妖怪。フフフッ)◎大妖怪著:イノウエ順子 その店には通称『妖怪』と呼ばれる常連がいて、あの手この手で勝ちに来る強敵であった。 その日、妖怪は私の下家にいた。「リーチだ」 妖怪からの先制リーチ。 すると妖怪の袖口が手牌に当たってしまい、右手側3枚の牌が倒れてしまう。西西九 西は場に2枚切れだ。「あははは! じいさん! チートイツか」「捨て牌に六萬も捨てて引っ掛けてたのに見えちゃったなあ!」と、お客2人は大笑いしていたが、私はあることに気付いていた。 妖怪のサイドテーブルに輪ゴムがあるということに。
47.第九話 手作りクッキー 翌日―― 今日は日曜日なのでまた紅中は井之上家へとやってくる。家事をするためではなく麻雀のメンツとしてだが。ピンポーン──────「さて、私は派遣メンバーではありませんので。今日は他にもなにかできないかと思い、クッキーを焼いてきましたよ!」「「えぇ?」」「あれ、クッキー苦手でしたか……? 台所にクッキーの缶が複数ありましたのできっとクッキーは好きなはずと読んだ上で作ってきたのですが」 相変わらずの観察力である。その読みは当たっていて、井之上家は全員クッキーが好きだ。……美味しいクッキーならば。というのが前提ではあるが。「い、いや、好きさ。全然嬉しいよ。チュンさんありがとう。今日はそれ食べながら麻雀しようよ、なっ? 士郎」「そそ、そうだね〜。それがいいね」(どうすんだよ。兄ちゃん)(どうもこうも、食うしかないだろ。大丈夫だ。4人で分けて食えばそんなたいした量じゃないだろ。牛乳もコーヒーもあるからごまかしながら食うぞ)(マジかよ〜。砂糖と塩間違えるとか古典的な失敗してたらさすがに食えないからね?)(さすがにそれはないだろ) 章生も明らかに(まいった)という感じの顔をしていたが、そういうのもすぐに察してしまう紅中なので章生は一瞬で表情を戻して笑顔で「ありがとうございます!」と言いクッキーを受け取った。すると……(うお! なんて量だ。すごいたっぷり作ってきたな……。これは事件だぞ) チラリと息子たちの